sweet memory
それから2人は、手を繋いだまま水族館を見て回った。
時折、寄り添いながら魚を見たり、触ったりしている中で、2人の距離感が縮まってきた。
そんな状況に、花菜は喜んでいた。
そして、イルカのブースに来ると、花菜は目を輝かせていた。
「本当にイルカが好きだな」
「はい。小さい頃から好きで、創くんによく水族館に連れてきて貰っていたんです」
「……」
「イルカが好きすぎて何十分もイルカのブースから離れなかったって創くんが言ってました」
「……」
「あのぬいぐるみも私が初めて水族館に来た時、創くんに駄々をこねて……あれ?」
「…どうした?」
「…何だろう?記憶が曖昧なんですかど、あのぬいぐるみ、ずっと創くんに買ってもらったと思ってたけど、何だか違う気がして…」
「!」
「変ですよね。でも、この場所に来て昔のことを思い出していたら、何だか違う気がしてきたんです」
「…そうか」
花菜は思い出そうとしていたが、記憶が曖昧過ぎて思い出せなかった。
無理もない。
10年も前の話で、花菜が5才の頃の話。
記憶が曖昧になってしまうのは仕方がなかった。
しかし、思い出の場所に訪れてみて、花菜は自分が忘れてしまっている何かがあるのではないかと思うようになった。
悩む花菜を見て奏大は、手を繋いでいない方の手で頭を撫でた。