sweet memory
その頃の律と花菜は、屋上でまったりと寛いでいた。
「りっくん」
「ん?」
「さっき凄く怖かった」
「あー…悪い」
律は罰が悪そうに花菜の頭を撫でた。
「穂波ちゃんがね、りっくんの噂を知っててね…」
「噂?何それ」
「りっくんは、冷酷王子様だって。
女の子が近づくものなら、一切無表情。そして、女の子が何かしようものなら、一切手加減なしで冷酷な言葉を投げかけるって…」
「まぁ、間違いはないな。花菜以外の女なんて、煩いだけだし騒がれて迷惑」
「りっくん」
「……」
「…りっくん?」
返事をしない律に違和感を覚えつつ、花菜は何度も声を掛けた。
律はどうやら屋上のドアをただじっと見ていたが、花菜の何度目かの声掛けに気付き、ようやく反応した。
「否、何でもない。花菜、もし何かあったらすぐ俺に言うんだぞ?」
「何かって?」
「さっきの奴らから嫌がらせとか、まぁ、色々だな」
花菜は特に何も気に止めなかった。
まさか、律が不安視していたことが現実に起ころうとしていようとは、この時は思いもよらなかった。