水ノ宮の陰陽師と巫女
「そうよねぇ……」
とぼんやりとした声で答えていた楓がハッと気づいた。
「あのケガは雅人のせいじゃないって!おじいちゃんに言わせたら、私が深追いしたせいなんだし。」
雅人の方を向き、両手を振りながら、雅人のせいじゃないとばかりにアピールしたが、
「本当にごめん……。」
「いいって、もう……。そんな顔されると、私が困る……よ……」
二人ともうつむいたまま沈黙が続いた。
学校内ではいつもは話はしない二人だ。
こんな風に二人で話をしてることは珍しい。学年が違うというのもあり、緊急以外は、学校内では話しかけないというのを二人の中で交わした約束でもあった。
なのに今は、今夜来る、妖と『主と呼ばれる者』のことで、話し合うつもりだったのに……。
そう思うと楓は、自分がケガをしたことで、雅人を苦しめてると思うと、辛くなって、目頭が熱くなるのを隠そうと必死になった。
楓にとって家族と共に雅人は大事な人で守るべき人だからだ。
そんな人に自分がケガしたことで、何日も落ち込み暗い顔をされたら、楓にとって胸を締め付けられるように苦しく、いつしか目には大粒の涙が貯まっていた。
そんな顔を見られたくない!その一心で、
「それじゃ……今夜、この屋上に24時ね。遅れないでね……」
お昼のお弁当を食べ終わった楓は片付けをしながら、スクッと立ち上がった時、グイっと左腕を引っ張られた。
「くっ……」
顔をゆがめたが、左腕の痛みを堪えながら
「なに……? 」
「楓が僕が危ない時助けてくれると言ったように、僕も楓が危ない時は助けるって、決めてるんだ……」
雅人の言葉を聞いて、どう反応していいのか、答えていいのかわからなかった。
自分と同じことを考えていたなんて、楓はずっと思ったことがなかったのだ。
子供の時、あんなに妖退治を嫌い、家を継ぐのすら嫌がっていた雅人を、今でもはっきりと覚えている。
でも……。楓はちょっぴり嬉しい感じがした。
無言でうんと頷いて掴んでいる雅人の手を見ていた。
「それより……楓に聞きたいことあるんだけど」
「なに?」
「被服室のロッカーの缶、封印してあるけど、あれはなんで封印したんだ」
雅人がずっと気になっていたのだろう。
「あぁ、あれ?あの中に一本だけさらに封印した針を入れてあるのよ」
「はっ? なんだよそれ」
「うーん、話すと長くなるかも?……」
続けるように促され楓は話した。
異空間に引きずり込まれ、現世に戻った時、『切開』で異空間から出た時、その時の遺物がないか思って探したときに、見つけた針だったことを話し、かすかに異様な感覚があったから、封紙で封印し、缶に入れてさらに封印したことを話した。
それに……。出針を使った佳織、操り針子の髪を飛ばすと、それはほとんど針のように細く鋭利なものに変わる、針穴はなくても針の可能性は高いことから、あの缶を封印したのだったと説明をした。
「なるほど……。もしかしたら、その封印した針は、操り針子の体の一部かもしれないってことか……」
コクコクと楓は頷き続けた。
「でもね、もし針一本でも妖の体の一部なら、取り返しに来るはずでしょう? それもないから、違うのかもしれないし……」
うーんと頭を抱えるように謎は増やさないでくれと言わんばかりに両手を頭に当てがい、フルフルと横に振った。
「まぁともかく……、楓の封印結界は有効なんだから。まずは操り針子を仕留めるのが先だな……」
「そうね」
「『主と呼ばれる者』はその後、片付けるという方法にしよう」
「それって作戦になるの? 」
と、楓は雅人の後半の提案は作戦とは言えないというかのように問いただした。
だが、今現在はっきりした情報はそこまでしかない。
やるだけやってみますか!と、二人はクスクス笑いだした。
ただ……楓は雅人には知られずに、昨夜もう一体式神を放っていることは言わずに……今夜に備えることにした。
とぼんやりとした声で答えていた楓がハッと気づいた。
「あのケガは雅人のせいじゃないって!おじいちゃんに言わせたら、私が深追いしたせいなんだし。」
雅人の方を向き、両手を振りながら、雅人のせいじゃないとばかりにアピールしたが、
「本当にごめん……。」
「いいって、もう……。そんな顔されると、私が困る……よ……」
二人ともうつむいたまま沈黙が続いた。
学校内ではいつもは話はしない二人だ。
こんな風に二人で話をしてることは珍しい。学年が違うというのもあり、緊急以外は、学校内では話しかけないというのを二人の中で交わした約束でもあった。
なのに今は、今夜来る、妖と『主と呼ばれる者』のことで、話し合うつもりだったのに……。
そう思うと楓は、自分がケガをしたことで、雅人を苦しめてると思うと、辛くなって、目頭が熱くなるのを隠そうと必死になった。
楓にとって家族と共に雅人は大事な人で守るべき人だからだ。
そんな人に自分がケガしたことで、何日も落ち込み暗い顔をされたら、楓にとって胸を締め付けられるように苦しく、いつしか目には大粒の涙が貯まっていた。
そんな顔を見られたくない!その一心で、
「それじゃ……今夜、この屋上に24時ね。遅れないでね……」
お昼のお弁当を食べ終わった楓は片付けをしながら、スクッと立ち上がった時、グイっと左腕を引っ張られた。
「くっ……」
顔をゆがめたが、左腕の痛みを堪えながら
「なに……? 」
「楓が僕が危ない時助けてくれると言ったように、僕も楓が危ない時は助けるって、決めてるんだ……」
雅人の言葉を聞いて、どう反応していいのか、答えていいのかわからなかった。
自分と同じことを考えていたなんて、楓はずっと思ったことがなかったのだ。
子供の時、あんなに妖退治を嫌い、家を継ぐのすら嫌がっていた雅人を、今でもはっきりと覚えている。
でも……。楓はちょっぴり嬉しい感じがした。
無言でうんと頷いて掴んでいる雅人の手を見ていた。
「それより……楓に聞きたいことあるんだけど」
「なに?」
「被服室のロッカーの缶、封印してあるけど、あれはなんで封印したんだ」
雅人がずっと気になっていたのだろう。
「あぁ、あれ?あの中に一本だけさらに封印した針を入れてあるのよ」
「はっ? なんだよそれ」
「うーん、話すと長くなるかも?……」
続けるように促され楓は話した。
異空間に引きずり込まれ、現世に戻った時、『切開』で異空間から出た時、その時の遺物がないか思って探したときに、見つけた針だったことを話し、かすかに異様な感覚があったから、封紙で封印し、缶に入れてさらに封印したことを話した。
それに……。出針を使った佳織、操り針子の髪を飛ばすと、それはほとんど針のように細く鋭利なものに変わる、針穴はなくても針の可能性は高いことから、あの缶を封印したのだったと説明をした。
「なるほど……。もしかしたら、その封印した針は、操り針子の体の一部かもしれないってことか……」
コクコクと楓は頷き続けた。
「でもね、もし針一本でも妖の体の一部なら、取り返しに来るはずでしょう? それもないから、違うのかもしれないし……」
うーんと頭を抱えるように謎は増やさないでくれと言わんばかりに両手を頭に当てがい、フルフルと横に振った。
「まぁともかく……、楓の封印結界は有効なんだから。まずは操り針子を仕留めるのが先だな……」
「そうね」
「『主と呼ばれる者』はその後、片付けるという方法にしよう」
「それって作戦になるの? 」
と、楓は雅人の後半の提案は作戦とは言えないというかのように問いただした。
だが、今現在はっきりした情報はそこまでしかない。
やるだけやってみますか!と、二人はクスクス笑いだした。
ただ……楓は雅人には知られずに、昨夜もう一体式神を放っていることは言わずに……今夜に備えることにした。