雨音を聴きながら
嘘みたい。
もはや、雨の音なんて聴こえない。
聴こえてくるのは、私の胸の鼓動だけ。
小さな折り畳み傘の下、時々肩がぶつかる。どちらからともなく頭を下げると、顔を上げた拍子に目が合って恥ずかしくなる。
ほんの数メートルの横断歩道が、とても長く感じられた。
胸の中には期待が半分、不安が半分。だけど、期待したい気持ちが少しだけ優勢。
横断歩道を渡り切り、地下街への階段の手前で足を止めた。間もなく突きつけられる別れを察知して、胸が震え始める。
彼と渡ってきた横断歩道の信号が点滅してる。信号を過って落ちてく雨粒が、まだ雨が降っていることを思い出させる。
名残惜しさを抑えきれなくて、きゅっと唇を噛んだ。