雨音を聴きながら
歩くたびに、片方の靴の中から変な音がする。靴の中で足が滑って、気持ち悪い上に歩きにくい。
こんな所で脱ぐわけにもいかないから、せめて地下街まで行こう。
地下街に着いたらトイレに駆け込んで、トイレットペーパーでもハンドタオルでも靴の中と足を拭けばいい。
もはや、全神経は足元に。
いつの間にか轟音を立てて降っていた雨の勢いが、僅かながら弱まったように思えるのは気のせいだろうか。足元ばかり気にしているせいかもしれない。
交差点の向こう、地下街への入口が見えてくる。
横断歩道の信号機は青だ。慌てて駆け出そうとしたのに、無情にも点滅を始める。
あと50メートルぐらい、頑張れ、私。
念じながら必死で走ったのに、信号機は赤に変わった。
いつもよりタイミングが早くない?
信号機を疑いの目で見据えるけど、無駄な足掻きでしかない。