雨音を聴きながら


ああ、ついてない。


いくら睨んでも応えない信号機にまとわり付く雨は、目障りだ。でも、少しだけ弱くなったようにも思える。


横断歩道を過っていく車が、路肩にできた水溜りを勢いよく踏みつけて水飛沫を跳ね上げる。危うく浴びそうになるのを、ぎりぎりでかわした。


あんな汚い水を浴びせられてはたまらないと、すぐに一歩下がって車を見送る。


空を見上げて、小さく息を吐いた。


傘の向こうに見える雨粒は、やはり小さくなっている。ざあという轟音は消えて、耳に届く雨音は静寂を取り戻し始めている。


そんな雨音と混じり合わない音が耳につく。


傘を打つ雨音は軽やかなリズムを刻んでいるのに、それとは違う明らかに異質な音。


ぱたぱたと忙しなく近づいてくるのは足音。



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