雨音を聴きながら
交差する道路の信号機が黄色に変わる。
これから、彼はどこに行くのだろう。
地下街の入口はこの交差点を渡ってすぐのところ、もう既に目の前に見えている。私はそこに入ってしまえば雨は凌げるけど、彼はどうするのだろう。
つらつら考えていたら、彼が振り向いた。
あまりにも突然だったから逃げる間もなく、傘を避ける余裕もない。
傘を掲げて固まる私に、彼がゆるりと微笑みかける。
「ありがとう」
と柔らかな声を発して。
しかも、ちらりと覗いた横顔と項から想像した通りのすっきりとした顔立ち。あまりにも、どストライクの顔だったからなおさら。
あわわと溺れそうになる私を見て、彼が不思議そうな顔をする。
彼の向こうで、信号が青に変わった。