社内人気No.1のアイツに不意打ちで愛されています。
13.一本の糸
君を抱き締めると、花の匂いがした。
甘い甘い、蜜の香りが
「氷室さん、コーヒーどうぞ」
「あぁ、ありがと」
「あのー、今夜良かったら食事とか…」
「ごめんね、今夜は先約があってさ」
「そっかぁ…また誘いますから!次はお願いしますねっ」
「うん、楽しみにしてる」
部署を異動してきて、二ヶ月半。
季節はもうすぐクリスマスを迎えようとしている頃。
俺が営業部にいるという光景に慣れ、以前ほど周りの女がキャーキャーと騒ぐことが落ち着いてきた最近。
それでも寄ってくる声は絶え間無く、そんな彼女たちを俺は笑顔であしらう。