社内人気No.1のアイツに不意打ちで愛されています。



ー…



「お先に失礼します」



その日の夕方、今日の仕事を終え帰ろうとオフィスを出ると、会社のビルの外はざあざあと雨が降っていた。



(…朝は雨の予報なんて言ってなかったのに)



どうやら外れたらしい今朝の天気予報に、傘なんて持っていない。



駅まで濡れて帰るしかないか…そう溜息をついては歩き出そうとした、その時



「うわ、雨降ってる」

「……」



後ろからやってきたのは、今日は定時であがりらしい氷室さんだった。



「あれ、宇浦ちゃん。傘は?」

「…忘れました」

「まぁ朝はあんなにいい天気だったもんねぇ」



彼はそう言いながら鞄から折りたたみの黒い傘を取り出す。


< 88 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop