社内人気No.1のアイツに不意打ちで愛されています。
ー…
「お先に失礼します」
その日の夕方、今日の仕事を終え帰ろうとオフィスを出ると、会社のビルの外はざあざあと雨が降っていた。
(…朝は雨の予報なんて言ってなかったのに)
どうやら外れたらしい今朝の天気予報に、傘なんて持っていない。
駅まで濡れて帰るしかないか…そう溜息をついては歩き出そうとした、その時
「うわ、雨降ってる」
「……」
後ろからやってきたのは、今日は定時であがりらしい氷室さんだった。
「あれ、宇浦ちゃん。傘は?」
「…忘れました」
「まぁ朝はあんなにいい天気だったもんねぇ」
彼はそう言いながら鞄から折りたたみの黒い傘を取り出す。