君がいればこんなにも世界が美しい
としえが施設に行って2週間。
梅雨入りしてコウちゃんと"歩く"ことが多くなった。
としえのとこまでは結構な距離があるから
自転車が使えないこの時期は会いにも行けへん
そんな矢先──
家に帰るなりお母さんが
「チヨ。としえさんと一緒やったんちゃうの?」
「何で?」
「としえさん"チヨちゃんコウちゃん"て言ったと思ったら施設抜け出してしもたらしいねん」
「えっ?」
嫌な予感がした。
電話で桐原さんからとしえが認知症かも
って聞いてたし、
実質施設抜け出すなんてよっぽどやし!
「ちょっとコウちゃんとこ行って来る!」
「え?ちょっとチヨ?」
傘をつかんで走り出す。
すると偶然か運命かコウちゃんも
同じタイミングで家を出てきた。
「チヨ!」
「コウちゃん!としえが!」
「施設まで行くか…」
バス停に向かって歩き出すコウちゃん。
「コウちゃん!」
「何やねん!」
「あたし…としえ家行ったと思うねん!」
「…それや」
「えっ?」
「それや!行くぞ!」
雨の中通い慣れた道を走り出す