拾われ化け猫
時がたつと、トモくんは次第に笑顔を取り戻していった。


トモくんは学校に行かなかったから、一緒にいる時間が長くなった。


僕は単純に嬉しかった。


ある日の晩ご飯のとき、お父さんとお母さんがトモくんに話すのが、食卓の上で聞こえた。


「トモ、転校して、新しいところでやり直さないか?」


トモくんは何も返さない。


「トモくん、いつまでも家にいるんじゃ、楽しくないでしょう?新しい学校に行けば……」
「行かない‼」


トモくんはお母さんの声を遮るようにして叫んだ。


「僕、もう学校には行かないっ、家にいる。レイルがいるから楽しい。レイルがいればいい‼」


トモくんは勢いよく立ち上がると、僕を抱き上げて自分の部屋にこもった。


「ひくっ、うぅ……」


トモくんは僕の毛並みに顔をうずめてしゃくりあげた。


僕はずっと胸が痛かった。


でも、きっと、トモくんの方がもっと痛い。


もっとずっと痛い。
< 13 / 24 >

この作品をシェア

pagetop