拾われ化け猫
トモくんが学校へ行かなくなって、数年がたった。


トモくんは背も伸びて、ずっと大人っぽくなった。


学校以外には普通に出かけるようになって、僕と過ごす時間が少し減った。


ある日、トモくんのもとに、昔よく来ていた友達の一人がやって来た。


その人を、トモくんは優しい笑顔で出迎えたけど、居間のソファに向かい合って座った後、僕を抱き上げた腕は震えていた。


「トモ、ごめん」


その人はそう言って頭を下げた。


トモくんは静かな目で、その人を見つめた。


「もう、いいんだ」


トモくんが穏やかな口調で言った。


「許したわけじゃないんだよ」


その人が帰った後に、トモくんは僕に微笑んで言った。


「ただ、自分のために許すふりをしただけ」


その時のトモくんは、見たことがないような、強くて真っ直ぐな目をしていた。
< 15 / 24 >

この作品をシェア

pagetop