そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
かおると同じ顔をした相良(さがら)ひな。

物静かで目立たない女。でも何よりその瞳に惹きつけられた。

容姿が同じだけというわけではなく、切ない空気が愛おしいかおると重なった。


それでも、もう本気にならない。女はいらない…

仕事は充実していても、遊ぶこともままならない毎日は苦行の連続。

目の前でちらつく相良の姿。

それだけで俺は気が狂いそうだった。

だから、朝と夕方以外はできるだけ社外にいるようにした。

それでも会わなくて済む日なんて…

ほとんどなかった。

でも相良は俺に気があるそぶりも見せなかった。

時に辛そうな表情をする時もあった。

風の噂に私生活でいろいろトラブルがあるらしいと聞いた。

力になってやりたい気持ちを隠しながら、でも近づけば自分が破滅しかねない。

そんな日常をなんとか過ごしていたのに…

ギリギリの精神状態の俺に相良は自ら飛び込んできた。


最高だった。

聡美はわがままお嬢様で自分の快楽ばかり要求して、俺のことは二の次。

他に遊んだ女たちにも、これほどのものは感じなかった。

それでも一度の気の迷いで終わらせようと思った。

女は探せばそれなりにいる。それで今まで事足りていた。

これでは遊びじゃなくなる。遊びでは済まなくなる…

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