君の冷たい手と
こんなことを考えてたら、いきなり松本君に話しかけられた。
「こっちはもう終わった!五十嵐さんはどう?」
どうだ!と言わんばかりの顔でこちらを見てくる。どうやら、思ってることがすぐ顔に出るタイプらしい。
「そ、そっか。松本君早いなぁ。私も後少しだから」
そう言いつつも、姫響の前にはまだ束ねられていないプリントが山のようにある。

それを驚きが隠せないと言った様子で彼がピシャリと言い放つ。
「それのどこが、後ちょっと?五十嵐さんって意外とのろいんだ」
なんだ、その顔。私をバカにしてるのが丸わかりだし。でも、本当の事だから何も言い返せない。
「私は、昔からのろいんだよ。後は1人でするから松本君は部活行って」
抑揚のない声で言い募る。すると意外な答えが返ってきた。
「いや、今まで委員長の仕事サボってたから、手伝うし。」
「え、…部活は?」
「今から行っても遅いしさ」
そう言って微笑んだ、松本君の笑顔が寂しそうに見えたのは、私の気のせいだろうか。
そんな私の気持ちを知る由もない松本君は、
「ほら、そこのプリント貸して」
私のプリントを荒々しく取っていった。
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