君の冷たい手と
「五十嵐さんが、さっきまですっごいマヌケ面だったから」
マヌケ面……。冷やし中華のこと考えてた時かも…。普通ならより腹を立てているところだが、恥ずかしい一面を見られてしまっては、そうもいかない。
「…あー、なんかごめん。勝手に怒鳴って」
小さくなりながら謝った。さっきまでのデカい態度の私はどこへ行ったのだろう。
「別に、それはいいんだけど。ただ、何のこと考えてたんだろって気になる」
さっきの、私の顔を思い出しているのか、まだクスクス笑っている。そこまでひどい顔だったのか。
「それは、聞かないでください」
今日初めて話した人に、“冷やし中華のこと考えてたの♪”なんて簡単に言うものではない。
「うわ、教えてくれてもいいだろ?」
「無理です」
「五十嵐さん、ケチー」
だんだんこっちもムキになってきた。
「何で、そんなに知りたいの!?」
「それは俺の勝手だろ!」
「そういうのキモイし!」
「お前にキモイって言われる筋合いはねぇ!」
我ながら、子供の喧嘩だな…。
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