君の冷たい手と
永遠に続く勢いの、この言い合いに疲れた姫響は、終止符を打つことにした。
「冷やし中華のこと考えてただけ!」
「へぇっ?冷やし…中華?」
松本君は素っ頓狂な声をあげた。
「五十嵐さん、あのさ…」
「何?」
「思いっきり笑っても良い?」
私の返事も聞かずに大声で笑い出した。
「くっくっ、冷やし中華であんな顔するのかよ。どんだけ食いしん坊なんだっ」
私はそんな彼を、冷ややかな目で見ていた。今日は何回この人に腹を立てれば済むのだろう。人の気持ちを逆なでするようなこの言動に。呆れて言葉も出ない。
「なんだぁ、その鋭い目は。可愛い顔が台無しだぞー。」
可愛い顔…、よくそんな冗談言えたな。自分が可愛くないのは嫌なほど知っている。小学生の頃男子に散々ブスと言われ続けてきた。
『うわっ、ブスにこっち見られたし』『俺達はバカで~、五十嵐はブス!』
記憶が不意に記憶が蘇り、不覚にも涙が込み上げてくる。もう逃げるよりほかはない。
「頼んでもいないのに、手伝ってくれてありがとう!後よろしく、さようなら。」
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