Summer again with
去年の夏、ナツにさりげなく女の子の好きな髪型を聞き出して。
それから私の髪型は、ずっとボブ。
かき氷の入った紙のカップの表面に、水滴が浮かぶ。
…他の同級生の男子なんか、知らないよ。
私は、ナツがいいんだ。
ナツが、好きなんだよ。
ナツじゃない彼氏なんか、いらないのに。
私は瞳に涙を浮かべて睨むと、客に注文を聞こうとするナツの背中に、叫んだ。
「ナツの馬鹿!!」
店にいる客が、一斉にこっちを向く。
ここにいる客の大半とは、もう知り合いだ。
後ろのほうから、「今年も未海ちゃんは頑張ってるねえ」なんて、おばちゃんの声がする。
…でもね、もう、頑張れるの、今年だけかもしれないんだよ。
ナツが、驚いた顔でこっちを振り向く。
…悔しいな。
やっぱり、君はかっこいい。
今年はじめてこの海の家にきたとき、知り合いのひとから「綺麗になったね、未海ちゃん」って、何度言われたか知ってる?
…頑張ってるんだよ。
あの夏の日から。
君がいない、季節だって。
君がいる季節を想って。
頑張って、きたのに…!
「ナツなんか、大っ嫌い!!」
真逆の言葉が口から零れ、私は店を飛び出した。
「ちょ…っ未海!」
後ろからナツの焦った声が聞こえたけど、私は振り返らない。