悪魔の彼



「私?遠慮しておきますわ。」



少し焦り気味の顔で答えた。


だが青年はいっこうに退く気配がない。


「そんなこと言わないで下さい。美しい人。仮面をつけているのにそれがはっきり分かるほどお美しい。」




「そんなことないですわ。失礼いたします。」



「待ってください」



腕を捕まれ、驚いて振り返る。

(言っていなかったが、シルヴィアは綺麗だ。驚くほど。)


「あっ、失礼。」


急いで腕を放す彼。



「あなたは本当にお美しい。周りを見てご覧なさい。」







………



確かに周りを見渡すと、いろんな視線が集まっている。


たいがいは、熱におかされたような目を、女子は鋭い視線を送り付けていた。



「私、体の調子が余りよくありませんので。」




そう言って私はバルコニーへと走った。











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