悪魔の彼
私は全身が凍り付いていくのが分かった。
動かない。
手も足も顔も
息さえすることが困難だ。
イアが捕まる……
その無慈悲に突き付けられた事実に硬直がひどくなっていく。
羽をだせ
逃げろ
早くこの場から逃げるんだ!
そう思っても体はいっこうに動く気配を見せない。
困り果て、目をそっとイアの方に動かす。
イアは
微笑んでいた。
いたずらな笑み
彼が何度も見せてきたそれだった。
「3……2……1……残念でしたぁ〜。」
イアが警官に向けて不思議な言葉を掛けた。
「な、なにがだ。」
私達の周りを囲みイアを捕らえる用意をしていた彼等は、不思議そうにそれでいて、厳しく緊張した顔つきでイアに尋ね返す。
「時間切れ。時効だよ。」
.