悪魔の彼





私は全身が凍り付いていくのが分かった。


動かない。
手も足も顔も



息さえすることが困難だ。

イアが捕まる……






その無慈悲に突き付けられた事実に硬直がひどくなっていく。







羽をだせ

逃げろ




早くこの場から逃げるんだ!




そう思っても体はいっこうに動く気配を見せない。








困り果て、目をそっとイアの方に動かす。







イアは













微笑んでいた。



いたずらな笑み


彼が何度も見せてきたそれだった。









「3……2……1……残念でしたぁ〜。」





イアが警官に向けて不思議な言葉を掛けた。





「な、なにがだ。」





私達の周りを囲みイアを捕らえる用意をしていた彼等は、不思議そうにそれでいて、厳しく緊張した顔つきでイアに尋ね返す。





「時間切れ。時効だよ。」














.
< 137 / 400 >

この作品をシェア

pagetop