悪魔の彼
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真っ暗闇のなか、思い鉄格子が目の前にそびえ立っているのが分かるようになった。
あれからどれくらいたったのかがわからない。
太陽も月もない世界。
牢にあるのは冷たくて堅苦しい沈黙と、いつ気づいたかは忘れてしまったパンとスープだけだ。
自分以外の何も感じられない。
「?」
そんなことを考えていた矢先だった。
小さい微かな音だが、誰かの足音が響いている。
その足音は、確実に自分の方へ向かってきている。
でも、顔は上げない。
何をする気も起きなかった。
愛しているものがなにもない暗い世界は、違う次元に来てしまったようだった。
愛しているものがない世界に、俺がいるいみはあるのだろうか……
逃げようと思えばいつでも逃げられた。
さっき鉄格子を少し力を入れて押してみたら、外側へ歪んでしまったのだ。
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