悪魔の彼







−−−−−−−−









真っ暗闇のなか、思い鉄格子が目の前にそびえ立っているのが分かるようになった。




あれからどれくらいたったのかがわからない。





太陽も月もない世界。

牢にあるのは冷たくて堅苦しい沈黙と、いつ気づいたかは忘れてしまったパンとスープだけだ。




自分以外の何も感じられない。






「?」






そんなことを考えていた矢先だった。



小さい微かな音だが、誰かの足音が響いている。




その足音は、確実に自分の方へ向かってきている。










でも、顔は上げない。


何をする気も起きなかった。

愛しているものがなにもない暗い世界は、違う次元に来てしまったようだった。





愛しているものがない世界に、俺がいるいみはあるのだろうか……






逃げようと思えばいつでも逃げられた。



さっき鉄格子を少し力を入れて押してみたら、外側へ歪んでしまったのだ。










< 267 / 400 >

この作品をシェア

pagetop