悪魔の彼
足音はだんだんと、確実に近づいてきて、俺の牢の前でぴたりと止まった。
「おい、クロニチシア、顔をあげろ。今から移動する。」
俺は顔を上げずに黙っていた。
「聞いているのか!」
そっと顔を上げて虚ろな目でそいつを見上げる。
まず見えたのが磨き上げられた革靴。
次に見えたのが警官の制服
そして最後に顔を見上げた。
その顔はどこか見覚えがあった。
そうだ………
親父に従順な悪魔の警官達の隊長だ。
あの時の優しい目はどこへやら、今は冷酷で見るものを怯えさせるような目をしていた。
憎いと思った。
殺してやりたいと………
思った
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