relations
気づいたら、目の前に男の人の顔があった。
「…ええと、なんて読むんでしたっけ」
「…すいません、眠ってしまいました。『つつじもりほのか』です」
「あ、そうそう。ごめんね、そうそう『つつじもり』か」
葬式だったというのに、髪はボサボサ、喪服のネクタイは捻じれている。見た目は「ダメ人間」そのものだ。それに社長の名前おぼえてないし。
「あなた、誰?」
「僕は、小野寺さんの部下の及川聖だよ。」
小野寺さんは私の父の会社の、どこかの位に居たらしい。
「ここではメジャーな名字ですね」
「まあ、そうだね。穂乃果さん…でいいのかな、穂乃果さんの名字は、他方では珍しいだろうね、ここでも珍しいけど」
「穂乃果でいいですよ。この名字書くの、面倒なんです。及川のほうが書きやすくていいです」
「そうだな、画数少ないし、『躑躅森』って日本で現存する名字の中で最も画数が多いからな」
「詳しいですね、ふふ」
久しぶりに笑ったような気がした。このダメ人間、なかなかやりおる。
「さあ…行こうか」
「はい」
幾分か、気楽になったものの、私の中では「死」についての関心が高まっていた。