relations

礼堂さんは、あいかわらず話しかけてくる。


「なにがあったの?」

「…人間ってさ、なんでこうも簡単に死んじゃうんだろうね」


気づけば、そんなことを質問していた。情けない、こんな姿を他人に見せたのは初めてかもしれない。


「そうですね…死は必ず訪れますから…死が訪れると、楽になるのか…それとも、この世にとどまるんですかね…」

「この世にとどまる、か…」


この世にとどまる、それは幽霊にとってどんな感覚なのだろう。


「どこかにはいるんじゃないですかね。それが必ずしも悪いものじゃないと思うんです。心残りがあるにしても、それが達成されたら…きっと幸せになれます」

「そうだね…ありがとう」


自然とお礼の言葉が口からこぼれた。礼堂君の言葉がすんなりと私は受け止めることができたからだ。


「いえ、いいんですよ。…そうか…」

「えっ、何か言った?」

「いえ…それじゃあ僕は帰ります。躑躅森さんも帰りますか?」

「ううん、私はまだ少しここにいるよ」

「そうですか…では」


礼堂さんは、そうして夜の闇へと消えていった。結局最後まで、礼堂さんの顔が見えなかった。どんな顔だったっけ?


私は少し、気分が楽になり、やがて病院に向かった。
< 18 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop