relations
礼堂さんは、あいかわらず話しかけてくる。
「なにがあったの?」
「…人間ってさ、なんでこうも簡単に死んじゃうんだろうね」
気づけば、そんなことを質問していた。情けない、こんな姿を他人に見せたのは初めてかもしれない。
「そうですね…死は必ず訪れますから…死が訪れると、楽になるのか…それとも、この世にとどまるんですかね…」
「この世にとどまる、か…」
この世にとどまる、それは幽霊にとってどんな感覚なのだろう。
「どこかにはいるんじゃないですかね。それが必ずしも悪いものじゃないと思うんです。心残りがあるにしても、それが達成されたら…きっと幸せになれます」
「そうだね…ありがとう」
自然とお礼の言葉が口からこぼれた。礼堂君の言葉がすんなりと私は受け止めることができたからだ。
「いえ、いいんですよ。…そうか…」
「えっ、何か言った?」
「いえ…それじゃあ僕は帰ります。躑躅森さんも帰りますか?」
「ううん、私はまだ少しここにいるよ」
「そうですか…では」
礼堂さんは、そうして夜の闇へと消えていった。結局最後まで、礼堂さんの顔が見えなかった。どんな顔だったっけ?
私は少し、気分が楽になり、やがて病院に向かった。