relations
「…そういうことさ。これは私自身が形成した人格ではない。両親に形成された人格…10歳まで一度も外に出れなかった…いや、外の世界を知らなかった僕なんだ」
「…嘘ですよね?」
「確かに、暴力なんてものは受けなかったけれど…僕は、10年間おんなじ場所で暮らしてたんだ。外という世界を知らなかった…さっきの.少年の目に映りこんだ衝撃の光景とは…もうわかるだろう?」
足がすくむ。そんなことがあっていいはずないし、あるはずなんてない。
「答えは単純明快。『外』さ。両親は僕が生まれたから10年間、監禁されてたのさ」
「…私をからかってるんですか…?」
そんな言葉しか出てこない。
「…残念ながら真実さ。五年前の自分は、自分の顔も知らなかったし…鏡というものを知らなかったからね…名字は僕を引き取ってくれた家の名字で、名前はその両親が読んでいたものから…」
「なら、蒼太君は…どうしてここに?」
認めざるを得ない。彼の言うことは嘘かもしれない…でも、ここまで真剣な目をしている人間が嘘をついているとは思わない。