relations

インドアな私がそこまで速く走れるわけがなかった。

後ろから蒼太君の呼ぶ声が聞こえる。それを振り払い走る。

階段を勢いよく駆け下りていたときだった。

「あっ…」

足がもつれた。体勢を崩して前から落ちる。このままだと頭から地面に落ちる…即死一直線だ。

地球の引力に従って、私の体は徐々に地に向かって降りていく。その光景が鮮明に目に焼き付く。おそらく、数秒のことなんだろうけど私は数分のように感じた。

そのまま…落ち…た?


「……っ…?」

痛くない。それに、今私の目の前にあるのは…階段?止まってる?

そこでようやく気付く。

私は引っ張られた、と。

「…死ぬ気?」

私の左手首をつかんでいるのは、蒼太君だった。

「…そんなこと…あるわけないじゃないですか……ぐすっ……うぅ…」

申し訳ない気持ちと、あとからやってきた恐怖に私は泣いてしまった。
蒼太君は黙って、泣き止むのを待ってくれた。
< 83 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop