黄昏に暮れる君へ
すべての始まり。
――遥か昔のことだった。
吸血鬼。
それは、人間の血を貪欲に求め続ける種族。
太陽の光や、十字架に弱く、夜の使徒として永遠の命を得たはずの種族。
かつて、吸血鬼を忌み嫌う聖職者によって、滅ぼされた種族。
――時は流れて、1726年。
ドラノワ公国の、小さな町で。
誰も近付くことを許さない不気味な森の奥には、ある貴人に匿われた少女がいるという噂が流れていた。
噂は、伝わるたびに捻じれ曲がって、また年月を経て……。
呪われた森には吸血鬼がいるという伝説が語り継がれることになった――。
そして、丁度その頃、ドラノワ公家に一人の赤子が産み落とされた。
父はドラノワ公家の次期当主、母はドラノワで名の知れた聖職者の娘だった。
その名を、サミュエル・クロード・ド・ドラノワという…――。
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