黄昏に暮れる君へ
――陽が沈もうとしていた。
「…早く行きなさい。
ここの主に見つかったら生きては帰れないわ」
「……ええ…、また来てもいいですか?」
「日がある内ならば、いつでも」
そこで僕は思い出した。
とても大事なことを聞いていない。
「お嬢さん…、お名前は?」
少女は少しもったいぶってから言った。
「――…セレスティーヌ。
セレスティーヌというの」
「そう…、素敵な名前だ。
僕の名はクロードです。
では、また会う日まで――」
少女は、去っていく青年の後姿を見つめて呟いた。
「…貴方の心が迷わなければ…、私たち、きっとまた会えるわ…。
――ねえ、クロード…」
――紺色の夜空に、細長い月が赤く笑っていた。