極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~

就職先をこの会社に決めたのは、“家から近かったから”その一点だけ。特に希望や夢を持って入った会社じゃなかった。


けれど所長に出会い仕事のノウハウを一から教わると、次第に仕事が楽しくなっていった。


多くのアイテムを扱う会社のため、そのひとつひとつの細かい情報や、お客様との接し方を教わると、お客様に名前を覚えてもらえ対応をほめられるようになった。仕事の上達が日々実感でき、やり甲斐を感じていった。


今の私の会社での地位があるのは、所長のお陰だと言っても過言じゃない。


この営業所が明るくオープンなのも、彼の性格からなるものだった。月一回ある親睦会も所長が発案し、仲間意識の向上に役だっている。


その所長がいなくなる?


所長の言葉の意図が分からなくて戸惑っていると、事務所内左奥にある応接室のドアがカチャリと音を立てて開いた。


「松浦所長。このお客様は……」


そう言いながらドアから出てきたのは、見知らぬイケメン。私を見つけると言葉を切り、ゆっくりと近づいてくる。目の前に立った彼からは、爽やかなシトラス系の香りが漂ってきた。
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