極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「堤所長、おはようございます。ご心配をお掛けしました。もう大丈夫です」
しょうがなく龍之介に頭を下げると、肩にポンッと手が置かれた。
な、何よ、この肩の手は?
不安げに顔を上げると、意地悪な笑みを湛えた龍之介と目が合った。
「優しい“ご両親”に看病してもらったんですね。菜都さんは、幸せな人だ」
今、“ご両親”に力を込めて言ったよね? ほんとに何を考えているんだか。
爽やか堤所長の仮面を被った、意地悪龍之介!!
誰が優しい人だって? そりゃね、お世話になったよ。頼んだ訳じゃないけど。
夜中にずっとそばで看病してくれたり、病院にも連れていってくれて感謝だってしてる。
でもあの翻弄されっぱなしの時間は、どう考えたって幸せには程遠い。
誰にも言わないでってあれだけお願いしたのに、これじゃあ早い段階でバレそうだよ。
大きく肩で息をしてひとり憤慨していると、その様子を見ていた拓海くんが私の肩に置かれている龍之介の手を払い除け、真剣な顔をして私の手を掴んだ。
「堤所長。ちょっと菜都さん借りますっ」
まるで何かを宣言するように龍之介に向かってそう言うと、唖然としている私を引っ張るように外へと連れ出した。
えぇっ、ちょっと、何? 拓海くん、一体どうしたっていうのよ?
わけも分からず引っ張られながら、龍之介の方を振り返る。
私と目が合った龍之介の顔は、少し怒っているようだった。