極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
龍之介の顔を見れば、早く話せと催促しているのか、私から目線を外さない。
ここで『やっぱり話しません』なんていうのは、許されないよね。
でも今この場所で話すのは、どうしても無理。
私も目線を逸らさず真っ直ぐ龍之介を見据えると、ふうっと息を吐いてから口を開く。
「堤所長、ここで長話になるのは困ります。仕事が終わってからでもいいですか?」
できれば今晩は、ひとりでいたかったんだけどなぁ……。
「ふ~ん、わかった。じゃあ夜にな」
そう言って私の頭をポンッと叩くと、事務所へと戻っていった。
龍之介の姿が見えなくなると、深い溜息を付いてその場にしゃがみ込み身体を丸めた。
一体なんなのよっ!!
龍之介が何をしたいのか、自分がどうしたいのか、全くわからない。
龍之介のバカッ!!
心の中でそう叫び顔を上げると、自転車が目に入る。
「また自転車、修理に持っていけないじゃない。やっぱり新しいの買おうかな」
ゆっくり立ち上がり自転車に手を掛けると、その自転車を一番隅に運び、私も事務所へと急いだ。