極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
自転車屋さんに自転車を預け、今は拓海くんの車の中。
気持ちも幾分落ち着いてきて、拓海くんとも普通に話せるようになっていた。
ふと拓海くんの横顔をみると、運転しながら何かを考えているのか、眉間にシワが寄っている。
「どうかしたの?」
「う、うん。ほら、今菜都さん、『何かお礼しなきゃね』って言ったじゃん。それ、今からしてもらってもいい?」
「えぇっ今からっ!? まぁ、私にできることなら今からでも構わな……」
「やったぁっ!!」
あ、あの……。まだ私、最後まで喋ってないんですけど。
でもそんなに嬉しそうな顔されたら、今更ダメなんて言えないよね。
ハンドルを握る拓海くんの手が、車内に流れている音楽に合わせてリズムをとっている。
そう言えば龍之介も、こんなことしてたなぁ。
……って私、こんな時に何思い出してんだろう。
拓海くんの手から目線を外し、車の外を見る。
この道。このまま真っ直ぐ行くと、龍之介のマンションだよね。
一度思い出してしまうと、頭の中が龍之介でいっぱいになってしまった。
ダメだ、ダメッ!! 思い出したって、何もいいことないじゃないっ!!
目を瞑り頭をブルブル振ると、肘掛けに掛けている右腕に手が触れる感触がして、ビクンッと身体が震えた。