極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~

「もしかして、堤所長が絡んでない?」


私の言葉に拓海くんが唇とキュッと引くと、ひと呼吸してからその唇を解いた。


「全く……敵わないなぁ。ねぇ菜都さん、堤所長の口の縁に傷があるの知ってる?」

「う、うん。なんかあったような気がする……」


拓海くんには言葉を濁したけれど、本当は知っている。


『女に噛み付かれた』───


なんて言ってたけどね。


でもそれがどうしたと言うんだろう。


「実はあれさぁ、カンナ水道の社長に殴られてできた傷なんだよね」

「えっ!!」


殴られたって、どういうこと? 私が受注ミスした時に謝りに行って、殴られたっていうの?


「なんで? なんで堤所長が殴られなくちゃいけないのよっ」


わけがわからず、思わず拓海くんに詰め寄ってしまう。


「ちょ、ちょっと菜都さん、落ちついてよ。今から順を追って話するから」


そう言って拓海くんに宥められると、床にペちゃんと座り込んだ。


やっぱりそれって私のせい? 


私があの傷に気づいたときは、何となくからかわれて終わってしまったけれど、あれは私に気を使ってのことだったの?
< 154 / 278 >

この作品をシェア

pagetop