極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「もしかして、堤所長が絡んでない?」
私の言葉に拓海くんが唇とキュッと引くと、ひと呼吸してからその唇を解いた。
「全く……敵わないなぁ。ねぇ菜都さん、堤所長の口の縁に傷があるの知ってる?」
「う、うん。なんかあったような気がする……」
拓海くんには言葉を濁したけれど、本当は知っている。
『女に噛み付かれた』───
なんて言ってたけどね。
でもそれがどうしたと言うんだろう。
「実はあれさぁ、カンナ水道の社長に殴られてできた傷なんだよね」
「えっ!!」
殴られたって、どういうこと? 私が受注ミスした時に謝りに行って、殴られたっていうの?
「なんで? なんで堤所長が殴られなくちゃいけないのよっ」
わけがわからず、思わず拓海くんに詰め寄ってしまう。
「ちょ、ちょっと菜都さん、落ちついてよ。今から順を追って話するから」
そう言って拓海くんに宥められると、床にペちゃんと座り込んだ。
やっぱりそれって私のせい?
私があの傷に気づいたときは、何となくからかわれて終わってしまったけれど、あれは私に気を使ってのことだったの?