極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~

サロンバスは高速道路を、順調に走っている。世間は夏休みに入っているからもう少し車が多いかと思っていたけれど、お盆前それも平日の金曜日だけあってさほどでもなかった。


今回の参加者は全部で40人。ばすのていいんは42人で、ほぼ満席状態。


それでも私は、なんとかひとりで一番前の席に座ることができた。


バスに乗り込む時、拓海くんに「一緒に座ろう」と誘われたけれど、さすがに今はそんな気分じゃない。


「ごめん」と謝ると、私の気持ちを汲んでくれたのか苦笑交じりに「寂しくなったらすぐ呼んで」と配送仲間の隣に座った。


そして、私をこんな気持にさせている張本人の龍之介はというと……。


バスの後部座席、サロンテーブルを囲んだ席に座り、上司や秘書課の面々と会話をしていた。


隣の席はもちろん、婚約者の清香さんがいる。


大型サロンバスとはいえ、同じ車内。後部座席の賑やかな声は、よく聞こえてきた。


調子のいい上司の声。それをからかうような秘書課の女性たちの声。たまに聞こえてくる上品な声で「龍之介さん」と呼ぶのは、清香さんだろうか。


後ろを振り向いて見ることのできない私は、その声に苛立ち苦しくなる。


龍之介の声といえば、時々聞こえる「はい」とか「ああ」とか簡単な返事だけ。


龍之介は何を考えているの? 昨日の夜、好きだって言ってくれたのは嘘だったの?


何も言ってくれない龍之介に、悲しみは深まるばかりだった。


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