極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
一回目のトイレ休憩で、バスがサービスエリアに停車した。
一番前の席に座っていた私はバスガイドさんの話が終わると、急いで外に出た。
山間にあるサービスエリアの休憩スペースに行くと、大きく深呼吸する。
まだ午前中だというのに日差しは容赦なく照りつけているけれど、街なかと違い風が気持ちがいい。
さっきまで塞ぎがちだった心が、少しだけ浮上する。
あの二人のことは気になるけれど、まだ旅行は始まったばかり。楽しまないと損だよね。
今朝はいろいろあって、ゆっくりコーヒーを飲む時間もなかったことを思い出しだす。ベンチから立ち上がると、自販機に行こうとしてその足を止められた。
「菜都さん、ちょっといいですか?」
やっとお出ましですか、龍之介。
いつもだったら、その穏やかで優しくて耳に心地よい声も、今はあまり聞きたくない。
それでも無視するわけにもいかなくて声がした方に顔を向けると、声とは裏腹にご立腹な様子。
意味がわからない。なんで龍之介が怒ってるわけ?
怒りたいのは、こっちのほうなのに……。
「なんでしょうか?」
龍之介の顔に怒りがふつふつと湧いてきて、思わず冷たい声を出してしまう。
「なんで菜都が怒ってんだよっ」
「はぁ!? それはこっちの台詞だよっ!!」
って、ヤバいっ。怒りに任せて、大声を出してしまった。
慌てて周りを見渡して、会社関係の人がいないことを確認すると、龍之介の耳元に顔を寄せるように近づいた。