極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「こんなところで菜都って呼ぶの、止めてもらえませんか? 迷惑です」
「そんなこと言って、こうやって身体寄せてるほうがヤバいんじゃないの?」
「あぁっ、そうだよね」
慌てて身体を離して、龍之介が可笑しそうにクックッと笑っているのに気づく。
また、からかわれた……。
何やってるんだろう、私。
こんなことをしたかったわけじゃないのに。
あの婚約者だという清香さんのことが、龍之介の口から聞きたかっただけなのに……。
龍之介が何を考えているのかわからないけれど、余裕綽々の態度を見てたら、不安で悲しんでいる自分がバカらしくなってきてしまった。
「龍之介のバカ……」
「はぁ? 何、よく聞こえなかったんだけど?」
「私もバカだけど、龍之介は大バカだって言ったんですっ!!」
ふんっ、言ってやった。
私がどんな気持ちでいたのか、よく考えればいいんだ。
昨日、私のことを“好きだ”と言ってくれた人に、やっぱり婚約者がいたなんて……。
そんなことを知って、私がどれだけ傷ついたことか。
「菜都。俺のこと、信用してないとか言うんじゃないよな?」
この期におよんで、まだそんなことを言うんだ。
「信じられない」
「菜都……」
今まで強気な態度でいた龍之介が、弱気な声を出す。
ちょっと言い過ぎた?
でも私はその声に何も感じない振りをして、その場から離れた。