極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「うっ……。気持ち悪い」
「先輩、大丈夫ですかぁ~?」
日本海の波が船体を揺らし、完全に船酔い。景色を楽しむところではなくなってしまった。
「未歩ちゃん、ちょっと外の風に当たってくる」
心配そうに「一緒に行きますぅ」と背中を擦る未歩ちゃんを制し、ひとり遊覧船の後部に出る。
そしてベンチに座り肘掛けに身体を預けていると、頬に当たる風が少しだけ気分を落ち着かせてくれた。
今日はとことんツイてない。なんで、こんなことになるのかなぁ……。
吐き気が治まりつつある身体をそろり起こすと、船内から誰かが出てくる足元が見えた。
「あら、あなたは……」
柔らかに囁くその声に顔を上げると、そこにいたのは……。
「あっ」
清香さん……。
なんでこうもタイミングの悪い時に、二人っきりで対面することになってしまうんだろう。
きっと今の私は、船酔いでひどい顔をしているはず。なのに彼女は、朝バスから降りてきた時と何も変わらず、綺麗なままだ。
「龍之介さんの営業所の方よね? 気分が悪そうだけど大丈夫?」
私の隣に座ると、そっと肩を抱いてくれた。私の身体を労るように肩を撫でる仕草はとても自然で、このまま身体を預けたくなってしまいそうだ。