極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「あの、もう大丈夫です。面倒をお掛けして、すみませんでした」
それでも相手は、龍之介の婚約者だと言われてる女性。素直に甘えることはできなくて、ベンチにきちんと座り直した。
秘書課の女性は営業所の女を、まるで召使のようにしか思ってないって聞いていたけれど、清香さんはそうではなさそうだ。
私を心配してくれるのも、本心からだろう。
もし本当に清香さんが龍之介の婚約者だったら、こんなに優しくて綺麗な人なんだもん。私に勝ち目はなさそうだ。
「そんな、私はなにもしてないもの。気にしないで。あっちょっと待ってて。龍之介さんを呼んでくるわね」
「えっ? そんな、いいです……」
止めたのにもかかわらず、清香さんはあっという間に船内へと消えてしまった。
こんな気持ちの時に、龍之介に会いたくないのに。
それにもし龍之介と清香さんが一緒に戻ってきたら……。
今の私は耐えられないかもしれない。
「菜都さんっ!!」
俯き泣きそうになっていると、私の名を叫びながら龍之介が慌ててやってきた。その後ろには、やっぱり清香さんの姿があって。
「龍之介さん。私、飲み物を持ってくるわね」
「あぁ、頼みます、清香」
清香……。龍之介の当たり前のようにそう呼ぶ姿に、胸が締め付けられる。
そして二人のやりとりは、まるで『あうんの呼吸』。互いの微妙な気持ちが一致しているのを、思い知らされてしまう。