極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~

「菜都、大丈夫か?」


さっき駆け込んできた時は“菜都さん”って呼んだくせに、清香さんがいなくなると菜都なんだ……。


今は社員旅行中。そして、会社でもいつも“菜都さん”と呼ばれているのに、今日はその呼び方が気に障る。


清香さんのことは、みんなの前でも“清香”って呼び捨てにするのに。


「大丈夫ですから、あっち行って下さいっ」


龍之介の顔を見ればわかる。本当に私のことを、心配してくれてくれているんだろう。


なのに私ときたら、可愛くない態度をとってしまって……。


「なんだよ、あっち行って下さいって。お前、俺にそんな態度していいわけ?」


『いいんですっ!!』 っていつもみたいに反論できたらいいのに。


今はそんな気分になれなくて……。


フンッとそっぽを向いて無言を貫いていると、龍之介が大きな溜息をつく声が聞こえた。


「菜都の機嫌が悪いのは、清香のことが原因……だよな」


わかってるんじゃない。だったらなんで、もっと早く話してくれなかったの?


頭の中でそう思っていても、声に出すことができない。


龍之介の顔を見ないまま、一度だけ小さく頷く。


「この旅行が終わったらすべてを話す。だから俺を信じて……っ」

「龍之介さん、ミネラルウォーターのがいいわよね? はい、これ飲んで」


清香さんは私の方に回りこみ、優しく微笑んだ。


こんな素敵な人が相手じゃ、最初から勝負にならないよ……。


清香さんから手渡されたよく冷えたペットボトルは、私の心の奥までも冷たくしていった。








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