極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
10 地獄から天国?
「菜都先輩、営業部長の話、長くありませんかぁ~」
未歩ちゃんが私の耳元に顔を寄せ小声でそう言うと、唇を尖らせた。
毎年宴会前のあいさつが長いことで有名な本社の部長だなけに、慣れているといえば慣れているんだけど……。
今年はいつにも増して饒舌で、正直私もうんざりし始めていたわけで。
そしてその場の誰もがしびれを切らし始めた頃、龍之介が突然コップを持って立ち上がった。
「本田部長、その話の続きは、僕にゆっくりと聞かせてはくれませんか? まずは乾杯といきましょう」
龍之介の物腰の柔らかな態度に、営業部長も「あぁ、そうだな」と素直にコップを津にした。
さすが、爽やか堤所長。このバージョン時の龍之介の、人を不快にさせない術は尊敬に値する。
私にも、そんなふうに接してくれればいいのに……。
ちょっと恨みがましい目つきで、龍之介を見つめる。
でもここは、この旅館で一番広い宴会場。龍之介と私の席は離れていて、私のそんな視線に彼が気づくこともなくて。
つまんない───
目を少し動かして清香さんを見てみれば、彼女もやっぱり龍之介を見ていて。
向かいの席にいる龍之介は清香さんの目線に気づくと、ふっと優しげな笑顔を見せた。
気に食わない───
どんな関係なのかは知らないけれど、今は私が龍之介の彼女のはずなのに……。