極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「市川さん、楽しんでる?」
お膳の上の小さな鉄板で焼かれているお肉を食べようと口を開けていると、本社の営業担当、弘田さんが声をかけてきた。
うちの担当だけあって、会うことも電話で話すことも多いけれど、正直私はこの人が苦手。
勝手に私の隣に座り込み顔を覗きこまれると、身体中が粟立つ。
確か、龍之介と同じ33歳だったか。それなりのイケメンでモテるみたいだけれど、それをひけらかす態度が鼻についた。
一昨年前の社員旅行から一緒になり、そのたびに近寄られて困っていたのだけれど。
今年はそんな素振りも見せずに、安心しきっていたのがマズかった。
「弘田さん、お久しぶりです」
当り障りのない、あいさつを交わす。
「久しぶりって、先月末もふたりっきりで会ったでしょ。忘れたなんて、言わせないよ」
忘れてた……。と言うか、まるでふたりでデートしたみたいないい方しないでほしい。
本社の応接室で、書類の受け渡しをしただけじゃない。
それに、全く興味のない人のことは、すぐに消去するようにしている。
とくに弘田さん、あなたのことは───
心のなかで毒づくと、一気に乾いてしまった口を潤すためにビールをひとくち飲んだ。