極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「俺にも注いで」
あぐらをかいて、私の目の前にコップを出す。
偉そうにっ!!
とは言えず、腹ただしい気持ちを抑え、黙ったままビールを注ぐ。
「市川さんは優しいよね。俺の奥さんにならない?」
誰があんたの奥さんになんかなるかっ!!
顔は笑って見せて、心のなかではあっかんべーをしてみせた。
「ところで、堤のやつはどう? ちゃんと所長やってんの?」
へ? 龍之介? 堤のやつってどういうこと?
弘田さんの言ったことがすぐに理解できなくて小首を傾げていると、彼は話を続けた。
「あいつと俺は、同期で元同僚。同じ営業で切磋琢磨した仲だったんだけどさぁ」
そこで一旦言葉を切ると、不敵な笑みを見せる。
なに、今の顔? ちょっと怖い。
でもそうか、担当営業さんとしか会うことはないから、龍之介が営業にいた事を知らなかった。
よく考えたら、ふたりとも33歳。同期で知り合いだと、もっと早く気づくべきだった。
何気なく龍之介のほうを向くと、そうはさせないと言わんばかりに肩に腕が回されて、向き直させられてしまう。
目の前には、ニヤリと不気味に笑う弘田さんの顔。
イヤだっ、気持ち悪い───
一瞬で身体が硬直し、身動きが取れなくなる。そのことに気づいた弘田さんは更に私を抱き寄せ、耳元に顔を近づけた。生あたたかい吐息が、耳に吹きかかる。