極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~

「や、やめて下さい。弘田さん、もう酔ってるんですか?」


いくら嫌いな人でも、相手は本社の人間。無下な態度をとることもできずにいると、耳元にある口から信じがたい言葉が発せられた。


「あいつ、うちの取引会社から賄賂をもらってたみたいでね。裏でいろいろと悪事を働いていたらしい」


嘘? あの龍之介に限ってそんなこと……。


驚きで声が出ず、ただ弘田さんの顔を見ることしかできない。


「さすがに驚くだろ。本人も必死で否定したし、その証拠は挙がらずじまい」


当たり前だ。龍之介はそんなこと、絶対にしない。


「でもさ、火のないところに煙は立たないって言うじゃん。上層部もそのまま放っておくこともできず、営業所に飛ばされたってわけ。あいつ、社長に可愛がられてて、次期部長とか言われてたのにな」


なにそれ? 結局は体よく降格されたってことじゃないっ!!


龍之介は、それを黙って受けたってこと?


信じられないっ!!


「清香との結婚もダメになって、ホント、バカなやつだよなぁ」


まるで龍之介のことを嘲るように笑うと、美味しそうにビールを飲み干した。


何なの、この人? 同期のくせに『ざまーみろ』と言わんばかりの態度をとるなんて。


彼の態度に頭にきて肩に乗せられている腕を思い切り解くと、彼から距離をとる。


「どうしたの、市川さん? ねぇ、最近あいつに気になる女ができたみたいなんだけど。もしかして市川さん、君じゃないよね?」


龍之介に気になる女……。それって、やっぱり私? それが本当なら、今はよくわからない状態だけど、やっぱり嬉しい。


ついつい顔がニヤけてしまいそうになるのを堪え、弘田さんを見据えた。
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