極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
翌日龍之介と一緒に出社すると、すぐに本社から電話が入った。
龍之介に電話を取り次ぎ、ひとりロッカールームへと急ぐ。
こんな朝早く本社から電話だなんて。きっと何かあったんだよね。
制服に着替え化粧の手直しをすると、足早に事務所に戻る。
「菜都、今から本社に行ってくる。弘田が辞表を出したそうだ。その時に、賄賂の件も話したみたいだな」
そう言って私を見つめるふたつの目は、悲しみに揺れていて……。
弘田さんのやったことは許されることではないけれど、龍之介の気持ちを思うと複雑で。
まだ誰も出社していないのをいいことに龍之介に近づくと、彼の両頬を包み込んだ。
「今はお互い辛いと思うけれど、またいつかきっと笑って会える日が来ると思うから」
頑張って……。
その気持ちを込めて少し背伸びをすると、自分から龍之介の唇にキスをした。
龍之介が驚いたように目を見開く。でもそれも一瞬のことで。すぐにいつもの力強い眼光を放てば、私の手を取り抱きしめた。
「俺に向かって、いつからそんな生意気なことを言うようになった? 今晩帰ったら、お仕置きだな」
「お仕置きって……。せっかく励ましてあげたのに」
唇を尖らせて怒った顔を見せると、その唇を摘まれる。
「そんな怒るなよ。可愛い顔が台無しだぞ」
「ん~んんんん、んん~!!(龍之介の、バカ~)」
摘まれたままそう叫ぶと、可笑しそうに笑う龍之介。そして私の身体を離すと、車の鍵を手にした。
「じゃあ行ってくる。俺が戻ってくるまで、ちゃんと待ってろよ」
私がうんっと小さく頷くと、龍之介は満足そうな笑みをたたえ事務所をあとにした。