極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「菜都先輩、本当にひとりで大丈夫ですかぁ~?」
心配そうな目で私を見る未歩ちゃんに、軽く手を挙げた。
「大丈夫、大丈夫。子供じゃないんだし。それに連絡がないってことは、そんなに遅くならないうちに戻ってくると思うしね」
それでも心配な顔を変えない未歩ちゃんに苦笑すると立ち上がり、彼女の背中を押してドアまで行き姿が見えなくなるまで見送った。
「未歩ちゃんったら、心配性なんだから」
事務所の中に入り時計を見ると、もうすぐ七時になろうとしていた。
終業時間時間から一時間半も経っている。仕事も明日の準備まで終わってしまい、後やることといえば事務所の掃除くらい?
ボーッとしていてもしょうがない。
トイレに向かい、掃除道具が入ったロッカーから雑巾を取り出す。それを水道で濡らし絞っていると、事務所の外で車の音がしたことに気づく。
龍之介が帰ってきた?
そっとトイレから事務所内を覗いていると、待ちに待った龍之介が事務所に入ってきた。
今すぐ出て行って龍之介に抱きつきたい気持ちを抑える。
そうだ。これだけ待たされたんだもん。ちょっと驚かすくらい、いいよね。
龍之介のことをこっそりと伺いながら、トイレで息を潜める。
キョロキョロしながら、龍之介が私のデスクの前に立った。そして、何かを見つめている。
あっ、しまった!! 椅子にバッグを置いたままだった!!
これじゃあ、私がまだ事務所内にいることはバレてしまった。
どうしようかとあたふたしていると、龍之介がどこかに電話をかけだした。
その電話をかけた先は……。
私の制服のポケットの中で携帯がブルブルと振動し、聞き慣れた音楽が大きな音で流れ始めた。