極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
その音を聞きつけた龍之介がこちらを向き、コツコツと靴を鳴らしながらゆっくりと近づいてきた。
ヤバい!! とは言え今更隠れたって、小さなトイレの中じゃすぐに見つかってしまう。
諦めて大人しく立っていると、龍之介が咳払いを一つして入り口に立ちはだかった。
「こんなとこで何してるんだよ」
「あははっ、何してるんでしょうね?」
「まさか、俺を驚かせてやろうとか思ってたわけじゃないよな?」
さすが、龍之介!! なんでもすぐにわかっちゃうんだよねぇ~。
……なんて、褒めてる場合じゃないでしょっ!!
ここは素直に謝るべき? でもまだ驚かしたわけじゃないのに謝るのもねぇ。
ひとりブツブツと呟いていると、腕を取られ事務所へと連れて行かれた。
「もうみんな帰ったのか?」
「は、はい。さっき未歩ちゃんが帰って、全員」
「そうか」
一言そう呟くと、応接セットのソファーに腰を沈めた。
そして自分の横をポンポンと叩きここへ座れと促されると、素直にそれに従う。
ふ~っと大きく息を吐く龍之介。その疲れたような顔が気になって、恐る恐る口を開いた。
「あ、あの。本社の方はどうでしたか?」
「あぁ、俺の疑いが晴れた。弘田が全部話していったそうだ。まぁ今更だけどな」
吐き捨てるように言うと、私の腰を引き寄せた。