極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
『早く言わないと、無理やり言わすことになるけど?』
無理やり言わすって、何する気~!! 何回も観て分かっているのに、心臓がバクバクする。
主任がキラリと妖しく瞳を光らせると、顔が近づいてきて……
「ピピピッピピピッピピピッピピピッ」
「あ~ん、もうっ!! いいところなのに~」
渋々リモコンの停止ボタンを押すと、ドサッとベッドに寝転んだ。
「浩輔さんみたいな人が、うちの営業所にも来ないかなぁ」
浩輔さん……。このドラマの主任の名前。
朝からDVDを見ては、もう4年も同じ事を言っている。
市川菜都(なつ)。26歳。A型。
身長155センチ。体重……言えない。
至って普通、どこにでもいるような女だ。
あっ。恋愛ドラマの見過ぎでちょっと妄想の気があるから、普通じゃないか。
大学を卒業後、配管資材や住宅設備機器を扱う水回り関係製品の総合商社に入社。本社とその県内に12の営業所があり、私はそのうちのひとつ、旭営業所に勤務していた。
主な仕事は、コンピュータでの伝票処理や、電話対応、店頭での接客。所長以下、営業、事務、配送の20人に満たない営業所だけに、配送以外の雑用は何でもやる。