極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~
「何考えてるのか知らないけど、早く車に乗ってっ」
肩に乗せていた手をそのまま背中に当てると、助手席まで促した。
やっぱり怒っているのか、普段と喋り方が違うことに違和感を感じる。
きっと見つけたくもない女を見つけてしまい、しょうがなく車を停めてしまったんだろう。だからこんな投げやりな口調なんだ。
だったら、放っておいてくれればよかったのに……。
そう思うと、足が動かなくなってしまった。
俯き手をギュッと握ると、かろうじて聞こえるくらいの声で、ぼそっと呟いた。
「いいです」
「え? 何?」
「歩いて帰るから、いいです」
背中に当たっている手から逃れると、家に向かって歩き出す。
やっぱり現実は、ドラマ通りにはいかない。ストーリーが甘く進むことはなくて、ヒロインは報われないまま。
四年間も待っていたドラマみたいな恋、今回こそ、できると思ったのになぁ……。
あぁ~もうっ!! グショグショになっているスニーカーって、かなり歩きにくい。
後ろで堤所長が見ているのも構わず、その場でスニーカーを脱ぎ捨てた。