第一話 縁結び神社
 初老の女性は私を待つかのようにゆっくりと歩いていた。私は小走りで追い付き、初老の女性の背について進んだ。廊下は二人分の軋み音で煩かった。 

 廊下は縁側へと繋がっており、初老の女性はその辺りの襖を一枚開けた。 

「お入りなさい」

 私は初老の女性より先に部屋へと足を踏み入れた。 左手が上座であろうか。何やら祭壇めいたものが置かれている。私が立ったままでいると、部屋の隅に積まれた座布団を一枚手に取り、「ここへお座りなさい」と導いてきた。私は言われたままにそこに腰を下ろした。 

「少しお待ちを」

 初老の女性は、一言そう言い残すと部屋を出ていった。襖は閉められた。 
 私は祭壇のようなものを眺め、これは仏壇かと思ったが、神社であることから、これは何かの神様なんだろうと一人推測したりしていた。再び襖が開けられた。初老の女性の手にはお盆に乗せられた急須と湯呑みがあった。 

「それで、何をどうしたいのだ?」

 初老の女性は、私の目前に湯呑みを置きながら問い掛けた。 
 
「えっと、何て言ったら良いのか・・・」

「何でも思っている事を言ってみなされ」

 初老の女性は、右手でお茶を勧める仕草をしながらそう言った。
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