第一話 縁結び神社
外からポツリポツリと雨音が聞こえ始めた。
「お恥ずかしい話なんですが、実は私は生まれてこのかた男性とお付き合いをした事が無く、歳も歳なのでこの辺で結婚したいと思い、絶対に御利益があるというこの神社にお願いに来たのですが・・・」
初老の女性は暫くの間黙り込んだ。その様子に私は不安を感じ、「あの、私は無理なんでしょうか」と少しばかり身を乗り出した。湯呑みのお茶が少し揺らいで波を打った。
「いや、そうでは無いのだが・・・」
初老の女性は歯に物が詰まった言い方をした。
「でしたら・・・」
初老の女性は言いにくそうにしていたが、やっとのことで口を開いた。
「実はの、ここは確かに縁結びの神が居られるところなのだが、自分自身の事をお願いする場所ではないのだ」
私は理解出来なかった。
「どういう事なんですか?」
湯呑みのお茶は再び揺れた。
「他人の縁を結ぶところだと言えば分かるかの?」
「他人の?」
「そうだ。他人のだ・・・・」
他人の縁結びしか駄目だという事か。だとしたら、友達でも親でも連れて来てお願いさせればそれで済むこと。私は、改めて出直そうと思った。私がバッグに手を伸ばすと、初老の女性は言った。
「縁結びと言っても良縁では無く、その逆だ」
バッグを掴んだ手が止まった。
「逆?」
「そうだ。逆だ」
今度は意味が判らなかった。
「つまり、憎しみのある他人が不幸に陥るように、それなりの相手と縁を結ばせる。そういうことだ」
私の脳裏に亜希美の哀れみを帯びた失笑の姿が浮かんだ。
「お恥ずかしい話なんですが、実は私は生まれてこのかた男性とお付き合いをした事が無く、歳も歳なのでこの辺で結婚したいと思い、絶対に御利益があるというこの神社にお願いに来たのですが・・・」
初老の女性は暫くの間黙り込んだ。その様子に私は不安を感じ、「あの、私は無理なんでしょうか」と少しばかり身を乗り出した。湯呑みのお茶が少し揺らいで波を打った。
「いや、そうでは無いのだが・・・」
初老の女性は歯に物が詰まった言い方をした。
「でしたら・・・」
初老の女性は言いにくそうにしていたが、やっとのことで口を開いた。
「実はの、ここは確かに縁結びの神が居られるところなのだが、自分自身の事をお願いする場所ではないのだ」
私は理解出来なかった。
「どういう事なんですか?」
湯呑みのお茶は再び揺れた。
「他人の縁を結ぶところだと言えば分かるかの?」
「他人の?」
「そうだ。他人のだ・・・・」
他人の縁結びしか駄目だという事か。だとしたら、友達でも親でも連れて来てお願いさせればそれで済むこと。私は、改めて出直そうと思った。私がバッグに手を伸ばすと、初老の女性は言った。
「縁結びと言っても良縁では無く、その逆だ」
バッグを掴んだ手が止まった。
「逆?」
「そうだ。逆だ」
今度は意味が判らなかった。
「つまり、憎しみのある他人が不幸に陥るように、それなりの相手と縁を結ばせる。そういうことだ」
私の脳裏に亜希美の哀れみを帯びた失笑の姿が浮かんだ。