『一生のお願い、聞いてよ。』
その日、紅茶花伝は入っていなかった。
もちろん、レシートも入ってない。
紅茶花伝と白い恋人の箱をクローゼットからまた出して、机に並べた。
次の日、どうしてもりょうくんのことが気になって、外に出ることにした。
りょうくんはどこかにいるはず。
歩いて歩いて歩きまくった。
その時、横を車が通った。
一瞬だったけど、運転席の人と目があった。
運転席の人は、先生だった。
隣には先生に笑いかける女の人、後ろにも男の子が乗っていた。
先生が結婚してて、子どももいることを初めて知って、ショックで体が動かなかった。
あたしはその場に泣き崩れ、どうしようもない気持ちになった。
先生の、傷付くよ、の意味が分かった瞬間だった。
一番でいれるなら、傷付いてもいいと思ったけど、一番でもなかったんだ。
あたしはその場で先生にメールを打った。
<先生、結婚してたんだね。知らなかったよ。先生の家庭壊したくないから、もう会わないようにしよう。お母さんには、あたしから伝えとくね。今までありがとう。だいすきだったよ。奥さんたちのこと、幸せにしてね。>
ほんとはめちゃくちゃに文句言いたいし、今でも先生をあたしだけのものにしたいと言う気持ちは変わらない。
でも、これがあたしの精一杯だった。
悔しい気持ちを押し殺した。
あたしはその場でただただ泣いていた。
『りょう?』
顔を上げると、勇治がいた。
涙で化粧が崩れているあたしを見て、勇治は慌てて近付いてきた。
勇治『どうしたんだよ?!』